犠牲

人は、周りに迷惑をかけずには生きられない。
人は、常に人の犠牲の上に立つ。
仕方の無い事。

解っている。
頭の中では。
しかし、だが、しかし。

誰かの犠牲の上に成り立つ幸せをつかみ、その幸せを素直に幸せと認識できるのか。
犠牲の無いのが真の幸せではないのか。

甘い理想論。

人は生き物を殺めずには生きていけない。
自分たちのために、家畜や魚を殺す。

自分がやらなくても、他の誰かが自分のためにやっている。
それを、かわいそうだと言う資格は俺たちには無い。間接的に自分でやっているのだから。

しかし、実際それを目にしたら。
きっと、「かわいそう」という言葉が胸をよぎるだろう。

筋違いな言葉。
かわいそうだけど、犠牲にする。

なぜ。
どうして。
かわいそうなのにどうして犠牲にする？

生きるために仕方が無い事だから。

生きるためならなんだって犠牲にして良いのか。
その犠牲に対して俺たちは何かしてやれているのか。

頭ではわかっている、仕方の無い犠牲。
しかし。
それが目の前だったなら。

見えないところでの犠牲には目をつぶるくせに、見えるところの犠牲だけ救おうとするとは、偽善もいいところだ。

だが実際目の前にある犠牲をそのまま見過ごせるほど割り切れてはいないし、悟ってもいない。

悪い事だろうか。
目の前の犠牲だけでも救おうとする事は。
見える範囲だけでもみんなで幸せになれるようすることは。

甘い考えだ。
犠牲が出ないわけが無い。
見えるか見えないかの差だ。
見えないところの犠牲者はどうなる。

できない。
できないと解っていても、
犠牲を出したくは無い。

犠牲の上に成り立つ幸せ。
それも幸せなのだろう。
そして、大抵の幸せはそれなのだろう。

でも、それでも。
犠牲の上に成り立つ幸せを、俺は幸せと呼びたくない。

見える範囲だけでもいい。
俺は犠牲の上に成り立つ幸せを、幸せとは呼べない。


みんなが幸せになれる道があったら良いのに。